峰月 皓
アスキーメディアワークス
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書籍レビューの第二弾は、峰月皓(ほうづきこう)さんの「
カエルの子は」です。ヽ(・∀・)ノワー
本書のレーベルである
メディアワークス文庫は、電撃文庫で有名な「
アスキー・メディアワークス」より2009年末に創刊された、比較的新しい文庫です。
Wikipedia によると「対象となる読者層は、
一般文芸読者や、
ライトノベルを卒業する人が中心となる」ということなので、カテゴライズは本当は一般小説なのかもしれませんが、私は
作中の絵がないだけのラノベだと思っているのでそっちにいれます!(`・ω・´) キリッ
私は
野崎まどさんの「
[映]アムリタ」を読んで大衝撃を受けて以来、このレーベルを買い続けています。
野崎さんのユーモアとアイデアと笑いに溢れた本が大好きです。
早く次回作出してくれー! щ(゚Д゚щ)カマーン!
で、話を戻して、今回ご紹介する
峰月皓さんも私の大好きな作家さんの一人です。
前作の
「俺のコンビニ」「俺たちのコンビニ」のコンビニシリーズでは、田舎町でコンビニを建てた若き店長の苦労と、仲間達の力によってそれが報われる感動が、素朴で力強い筆致で描かれていました。
読了した後は、もう虜になっていました。
しかしそれだけに、ちょっと今回は読む前から不安がありました。
果たして、前作のシリーズを超えるだけの作品なのか? と。
おもしろいのかな? と。
しかし、そんな私の薄っぺらい不安は、十数ページも読むうちに、きれいさっぱり地平線の彼方にぶっとんでいってしまいました……。
感想とか
遊園地でカエルの着ぐるみの仕事をこなす一人の男のもとに、いきなり「父ちゃん!」と元気に叫ぶ子供が現れる。いきなりの息子の登場に、子供が苦手な男は戸惑い、平穏な生活は崩れてゆく。しかし、次第にその子供は周りに影響を与え、男は忘れていた自分を取り戻してゆく――。
ほう、今回は親子ものか。
ずいぶん前回までとは趣向が違うのだな、と思いました。
しかし、これがまたおもしろい。
唐突に現れた「息子」を中心に物語は展開してゆき、彼の勇気と行動が、結局はすべてをいい方向に変えてしまう。
男は、実は子供好きだったという過去を思い出し、世界中を旅していた頃の気力を取り戻して、最後には旅に出てゆく。
笑うことができず、子供と触れ合えなかった遊園地の女上司は笑えるようになり、新たな自分を手に入れる。
お互いのことを尊敬しあう父と子。
そんな感動の物語が、相変わらずの素朴で力強く、伝わりやすい文章で描かれています。
この突然現れやがった息子は、母親のことを聞いても「絶対言わない!」の一点張りで、結局物語の最後まで、母親のことは謎に包まれたままです。
なぜ言わないと意固地を張っていたのでしょう?
子供ながらに、母親のことを伝えることで、父の何かを悪い方向に変えてしまうということを感じとっていたのでしょうか……。
まぁ、それも読了後には「ま、いいか」と思えるほどのことに成り下がってしまいました。
もしこの物語に続きがあったなら、きっといつか伝えることもあるんだろうと、そう思えましたから。
前作を含めた総評として、峰月さんの作品の特徴としていえる事は、人物描写が非常にうまい、ということだとおもいます。
読み進めるうちに、いつの間にか心の中に物語が陣取って、その中でキャラが熱演を繰り広げているのです。
主人公の男のもとに子供が現れたときは「何だこいつ」と一緒になってイラッとし、一緒に生活しているうちにだんだんと暖かい気持ちに満たされ、最後に「旅に出る」といったときは新鮮な気持ちで溢れる。
そんな登場人物の感情を、一緒になって体験できるのです。
ストーリーも素晴らしいのですが、キャラの描写が生き生きとしていて、それらが絡み合って生み出す人間関係が最大の魅力であると思います。
本の世界にドップリとつかって、堪能できる。
本を読む喜びを感じさせてくれる、本当にいい作品でした。
お役立ち知識
作中に出てきて気になった言葉とか。
語句 | 読み | ページ | 説明 |
シナイ | - | 18 | 西アジアのアラビア半島とアフリカ大陸北東部の間にある半島。北は地中海、南は紅海、東はアカバ湾、西はスエズ湾にそれぞれ面している。南へ向けた三角形の形状をしており、先端はムハンマド岬。南部にはシナイ山がある。 |
トルティーヤ | - | 24 | すり潰したトウモロコシから作る、メキシコ、アメリカ合衆国南西部および中央アメリカの伝統的な薄焼きパンである。現代では、小麦粉から作られた同様のものもトルティーヤと呼ばれている。 |
ジャンバラヤ | - | 76 | 米を使ったケイジャン・サンニスミン料理の一つである。また、カントリー・ソングのスタンダード・ナンバーの名前でもある。 |
エンチラーダ | - | 77 | フィリングを詰めたトウモロコシのトルティーヤを巻いてフィリングを詰め、唐辛子のソースをかけた料理である。フィリングには肉、チーズ、豆、ジャガイモ、野菜、魚介やそれらの組み合わせ等、様々な具材が使われる。 |
フィッシュ&チップス | - | 132 | イギリスを代表する料理のひとつ。歴史あるファーストフードの一つである手軽な食事。タラやカレイ、オヒョウなどの白身魚の切り身に、小麦粉を卵や水またはビールで溶いた衣をつけて油で揚げたものと、ジャガイモを細い棒状に切って油で揚げたチップスと合わせて供する。この場合のチップスは、薄くパリッとしたポテトチップスのことではなく、日本語で言うフライドポテト(アメリカで言うフレンチフライ)のイギリスでの呼び名である。 一概には言えないが、大体のカロリーは一人前(魚の切り身小一切れにジャガイモ中一個分)で450キロカロリー程。 |
董が立つ | とうがたつ | 134 | 人が、その目的に最適の年齢を過ぎてしまう。若い盛りが過ぎる。特に、婚期についていう。 |
アジール | - | 189 | 歴史的・社会的な概念で、「聖域」「自由領域」「避難所」「無縁所」などとも呼ばれる特殊なエリアのことを意味する。ギリシア語の「ἄσυλον(asulon:侵すことのできない、神聖な場所の意)」を語源とする。具体的には、おおむね「統治権力が及ばない地域」ということになる。現代の法制度の中で近いものを探せば「治外法権(が認められた場所)」のようなものである。 |
トンボを打つ | とんぼをうつ | 224 | トンボ返りを打つ、の略? 宙返りをすること。 |
しかし、この部分いちいちHTMLテーブルで書くのめんどくさい……(´д`)
なんかいい方法募集中~。
評価
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評価 B。
自作も楽しみにしています!
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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 学問・文化・芸術
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